別れの時
 痛むほどきつい場所に力尽くで押し込むのだから、シヤの苦痛は想像を超えるものだろうと感じたが、「ごめんな」と小さく言うとレグルは奧まで抉った。
 すべてをシヤの中に埋めた。
 レグルの腕の中で細い体が藻掻いて、暴れて、逃げようとしたが捉えたまま、引き抜きざま押し込んだ。
「あ、いっ、痛っ・・・や、あ、あっ、あっーーー」
 苦痛のために勢いを失ったシヤのものを扱いてやると、再び勃ちあがった。
「ひぃ、あ、あふ、あんっ・・・」
 悲鳴に近かった声に、甘い色味が混ざっていた。
「やあ、レグルっ・・・あんっ、あっ、あ、あっ・・・」
 シヤの片脚を持ち上げて角度を変えて深く突き上げ、揺さぶり続けた。
 甘い啼き声も、レグルを銜えて締め上げる中もひどく良くて、良すぎてあまり長く保ちそうになくなったレグルはシヤの髪に口づけをする。
 気付いたシヤが首を捻って口を重ねていた。もっとせがむシヤが可愛く、愛しくて、苦しかった。
 このまま、ずっとあれたら良かったのにーーーと、初めて悲しみを感じた。
「シヤ、いいこだ」
 縛めを説いて根本から、扱きあげると、シヤは体を震わせて性を吹き上げた。
 シヤと同時に最奧まで強く突き上げたレグルも達していた。
 レグルとシヤ、二人共が果ててずるずると座り込んでいた。
 苦しいほど弾んでいた呼吸を整えたシヤが、体を起こして檻の外にいるレグルを振り返る。
 レグルは座り込んで、檻に背を預けるように座ったままだった。
「レグル・・・?」
 レグルの呼吸も動悸も収まらず、乱れたままで苦しげに蹲っていることにシヤも気が付いて、心配そうな声を出した。
「どうしたの、レグル・・・ひどい汗だよ、顔も真っ青だよ」
「・・・ああ、大丈夫だ・・・。ときどきあることだから」
 檻の柵を掴んで、腕の力で起ちあがったレグルは静かに、シヤに向き合っていた。
「シヤ、俺はおまえに、ひどいことをしたか?」
「ううん、していないよ」
 レグルの普通ではない状態に異変を感じ取ったシヤは真剣な表情で首を横に振った。
「なら、良かった・・・」
「少し痛かったけど、平気、気持ち良かったから、ぜんぜん、平気。そんなことはいいの、でもレグルがーーー具合が悪いのでしょ、苦しそうだ、どうしたらいいの、どうしたらっーーー」
「俺のことは大丈夫だ、心配はいらない・・・。でも、今日でお別れだ。ここを離れることになったから・・・」
 慌てるシヤを宥めたかったが、言わなければいけないことを告げたとき、余計にシヤを追い詰めることになった。
「嘘だ、嫌、そんなの駄目だ!レグル、行かないで、ずっとここにいてっ、一緒にいてまたこうやって気持ちのいいことをしようよ!あ、レグルは、わたしでは気持ち良くなれなかったの?今度は、もっと上手くするから、レグルが良くなるように、だからっーーー」
「ーーー悪い。もう決めたんだ」
 泣き出したシヤに、レグルは辛そうに顔を歪めた。
「そんなの嫌、絶対に嫌、行かないで!レグル、お願いだから、お願いだからっ・・・」
 駄々っ子のように泣き出してレグルは困ったが、でも無理だった。もうレグルの体は動かなくなる。
 腹のでき物が、レグルを殺す。
 湿っぽくなってしまうから、それをシヤには言いたくなく、ただの別れにしたかったのだ。
 だけど、予定通りにゆかない。
 まったくゆかない。
 でき物のことは誰にも話していなかった。レグル本人以外は知らないはずのことだったのに、ザフィネだった。
 檻越しに怪我を負って蹲る娘を抱きながら、ザフィネは言った。
「シヤ。レグルはもう死ぬんだよ」
 涙を止めたシヤは言葉もなく、ザフィネを振り返ると見つめた。
「おまえは気付かないのかい。レグルから、肉の腐った匂いがする。体のどこかに、腐った塊が出来ていてもうかなり大きく育っている。もうじき死ぬ。私の娘ナナカと同じ匂いだからよくわかる」
「・・・ザフィネ、やめてくれ。俺は去る。もうおまえたちと関わらないから」
「どこかでひっそり死ぬ覚悟が出来ているってことかい?」
「ああ。ーーーわりと楽しくて・・・ここに迷い込んで予想の他、楽しかったから、少し長くなってしまった。だが、もう行くよ」
 ザフィネは苦笑を浮かべただけだったが、シヤには無理だ。
「いや、そんな嫌、ぜったいいや、行っちゃ嫌っ、死んじゃ嫌っ!」
 目茶苦茶に叫んでレグルを引き留めようとする。
「シヤ、うるさい。黙ってろ。ーーーレグル、あんた、勝手だなあ。そんな勝手が、ひとり許されると思っているのか?」
「・・・悪い、な」
 痛みが強く、頭が朦朧としていた。立っているだけでも必死だったから、レグルは、ザフィネがシヤに送った目配せに気が付かなかった。
 腕を動かして抱きしめるような仕草の意味を、考えられなかった。
 レグルは檻から離れて去ってゆこうとした。
 けれど、そのときレグルは捉えられていた。
 長いが、女のように細い腕だった。檻の中から伸びて、檻の外のレグルの腕を掴んで引いた。
 細腕の生み出す力とは思えない強い力に引き倒されて檻に背をぶつけた。
 痛みを堪え、立っているだけで精一杯にレグルに引き剥がせられる力ではなかった。
 シヤがレグルの体を抱きしめている。
「離せ・・・」
「嫌だ」
「シヤ・・・離してくれ・・・」
「嫌っ、死ぬなら、ここで死んでっ!」
「それは・・・遠慮したい・・・」
 悪い冗談だとレグルは冷や汗を浮かべながら笑ったが、シヤは本気だった。
 ザフィネも巫山戯ているだけじゃなく、真面目だった。
「シヤ、絶対、離すなよ。手放したくないんだろ、意地でも捕まえてろ」
 無茶なーーー。
 レグルは思ったが、口には出せなかった。
 強い痛みに息が詰まった。
 もうそれ以上意識を保っていられなくなって、シヤに捕らえられた状態のまま、レグルは気を失っていた。



20160118

前へ 目次 次へ