敷地

 はじめて足を踏み入れた、見知らぬ土地だった。
 草原はいつの間にか緑の密度と高さを増し、深い森に迷い込んでしまったことを知ったレグルは、ほんの一瞬立ち止まって考えたが、再び歩き始めた。
 どこか、行く当てがある旅ではない。
 それに引き返すにしてももうずいぶん歩いているから簡単なことではないはずだった。
 四方をぐるりと取り囲むは、同じ種類、同じ様に刈り込まれた木立の風景で、もうずいぶん続いている。
 木も草も無個性に形を強制されたものが見渡す限り続く。想像すると目が回りそうだったが、進むだけなら断崖絶壁があるわけでなく道は続くから、歩き続けられた。
 森は濃かったが、穏やかだった。
 穏やかすぎて、ひどく不気味だったが襲いかかる敵の気配がないことを第一として、ありがたいと考えた。
 それは、ひたすら歩き、ふと鼻孔に届いた微かな匂いだった。
 それからはその一筋の匂いを追って進んだ。
 よく知っている匂いであり、でもまったく知らない匂いだとも感じた。
 不思議な匂いだった。
 レグルは、その匂いになぜかとても惹きつけられた。
 あたりにはそれ以外の嫌な匂いが多すぎて吐きそうになっていたから、その匂いは比較的ましで、好く感じただけなのかも知れない。
 途中からは、はらわたを潰されるような苦痛に襲われながら、レグルはもうろうとなりながら歩いていった。
 そうして、辿り着いた場所だった。
 どうやって行きついたか、自分でも地図は描けないと思った。
 強烈な匂いが一帯を支配する地だった。
 不愉快なものと、しっとりと心地の良いものが強く混じり合い、鈍く痺れたようになって嗅覚が働かなくなっていくのをレグルは感じた。



20160118改
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